音響外傷




◆ 音響外傷と騒音性難聴



■音響外傷


強大な音楽を聴いたために耳鳴りと難聴が急に発生するとき、一般的には音響外傷とも言われます。
コンサートやディスコでスピーカーの直前にいたときや、ヘッドホンで大きな音を聞いたときがこの難聴の発生する非常に多いケースです。
音楽としてはロック系のものが殆どで、歌謡曲やクラシックではあまり発生しません。
ディスコやロック音楽などではコンサートにしてもヘッドホンでも100dB(デシベル)以上の強大な音響が持続することで難聴が発生します。


色々な場所での音の大きさ

一瞬にして音響外傷が起こる音の大きさは130dBとされ、予期していなかった強大な音によって起こる突発事故の場合に使われます。
耳元で突然に銃が暴発したり爆竹が破裂したときなどです。
肉体的な過労状態、精神的ストレスが溜まっているとき、睡眠不足の時、飲酒しながら、激しく頭部や体を揺さぶりながら、強大な音楽を2時間以上にわたって聞き続けるときに、この病気はある日急に発生します。
自覚症状としては右か左の片方あるいは両側の耳鳴りと難聴、耳閉塞感、めまい感が殆どの人で出現します。右と左で聞こえ方が違うとか、音が二重に聞こえることもあります。
軽い場合はそれ以降に大きな音を聞かないようにしているだけで、翌日位には自然に治っています。
数日症状が続いているような場合でも、早期に治療を開始できた人も治る率が高いと言われています。
1週間以上経っても難聴や耳鳴りが続いている場合は非常に治りにくいので、出来るだけ早く耳鼻咽喉科で診断と治療を受けてください。
ビタミンB剤、ステロイドホルモン剤、血管拡張剤、血流改善剤などの投薬が使われます。
重症の場合には突発性難聴の治療法に準じ、入院して安静の上、点滴や高圧酸素療法などが行われることもあります。



■騒音性難聴・職業性難聴


慢性的に大きな音に曝されている職業の人では徐々に難聴が進行することがあります。
造船所・鉄工所・板金加工所の勤務、ブルドーザーの運転手、電話交換手など、何年も大きな音の中で働かなければならなかった人に多く見られます。
高い方の音から耳の聞こえが悪くなりますが、会話では使用しないような高音域から難聴が進行していきますから聞こえが悪くなり始めたその初期にはご本人も聴力の悪化に気づきません。
かなり聞こえの悪さがはっきりしてからその異常さが自覚されるのですが、それからでは治療をしても間に合いません。
いったん悪くなってしまった聴力は二度と回復しないのです。この難聴には予防が一番です。
また、若い人が一日中ヘッドホンを装着し音楽を楽しんでいる光景を見かけます。
これでは職業性難聴と同じ形の聴力損失をきたすことになります。この難聴は4,000Hz付近の聴力損失が特徴的です。


●予防 : 不測の事故によって起こる音響外傷は防ぎようがありません。
  • 職業上やむを得ず騒音環境に曝されることがわかっている場合や、大音響を発生する機器を使用したり、ロックコンサートでは奏者も観客もスピーカーの直前を避けること、あらかじめ耳栓を使用することが重要です。
  • 過労や睡眠不足、飲酒の状態ではコンサートに行かない、そのような状態では演奏しないこと。
  • 音楽の練習中でも病気は発生しますから、音量を絞り、頻回に休止して耳を休ませることです。
  • ヘッドホンでロック系音楽を大音量で日常的に聴取することは耳にとって非常に危険な行為です。

■大きな音を聞いている状況下で、少しでも耳鳴りや耳閉塞感や耳に違和感を感じたらすぐに止めるかその場から避難することが大切です。