補聴器のしくみ
■アナログ補聴器
図のようにマイク → 増幅器(アンプ)→ イヤホン(レシーバー)からなる単純な音の拡声器です。その増幅器(アンプ)に調整器を付けて出力音を調整しています。
全ての音を一様に大きくしたのでボリュームが無いと音が小さかったり、大きすぎたりして不便でした。
また、単純な回路の為に調整も細かくは出来ず、調整技師の力量に大きく左右されました。
■デジタル補聴器
デジタル信号処理回路(DSP:Digital Signal Processor )が聞こえの改善のために多くの処理をするようになり、経験が少なくとも大体満足のいく調整ができるようになりました。
メモリとはいくつかの違う音質に切換えるための調整記憶器です。
●機能の説明図
■現在の補聴器には大きく分けると下記の機能が使われています。
- マルチチャンネル動作 (複数の増幅器)
- ノイズリダクション (騒音抑制)
- ハウリングキャンセラー (発振相殺)
- プログラムメモリ (調整記憶器)
- データログ (使用記録)
- 無線通信 (リモコン)
- FM通信
1)マルチチャンネル
ⅰ)利得(=ゲイン:増幅量)調整
聴力損失に応じた周波数(チャンネル)毎の増幅量を細かく調整できます。
ⅱ)ニーポイント調整
聞こえない小さな音は大きく、話声は少し大きく、大きな音はそのままに鼓膜に届く様に各音量を個別に調節できます。
(アナログ補聴器は全ての大きさの音を同じ大きさに増幅(リニア:直線)しましたがデジタルになってからニーポイント設定で入力音の大きさに対して異なった増幅(ノンリニア:非直線)が出来るようになりました。
2)ノイズリダクション
ⅰ)定常騒音の低減
人の声以外で定常騒音(モーター音やゴー、ザーという雑音)を判断してその音のみを減少させて言葉との大きさの差を広げて聞き取りやすくします。
ⅱ)指向性の切替
騒音の中で相手の話を聞きとるためにマイクの指向性を替えて周囲の騒音をマイクが拾わない様にします。
3)ハウリングキャンセラー
音が漏れて補聴器からピーという音が出て言葉が聞き取れなくならない様にその音を消すことをします。 赤い波形のピーという音に対して緑色の同じ形で逆向きの音を発生させて相殺して消します。
4)プログラムメモリ
環境に合わせた音質の調整をいくつか記憶させて切換えることができます。
5)データログ
補聴器の使用状況を把握するために補聴器内に使用音環境が記憶され、調整の手助けとなります。
6)無線通信
リモコン操作で補聴器の調整のみならず、テレビの音声や電話の声を居ながらに無線で聞くことができます。
また、左右の補聴器が通信し合って同調するので聞こえがよくなります。